どきん
どきん
耳が、熱い。
彼の手に、その温もりに、あたしの心臓がさっきから鳴り止まない。
涼村くんは、あたしを一度も見ずに、無言のまま、ただただ歩いた。
どこに行くんだろうと思ってると、階段をただ登り始めた。
3階を折り返したあたりで、ああ、屋上の方にいくんだって気づく。
屋上は開放されていないので、入ることは出来ないけれど。
涼村くんも屋上が開放されていないことはわかっているようで、扉の前でくるりと反転して、その前の階段に腰掛けた。
目で座れ、と合図された。
隣にゆっくり腰かけると、涼村くんはあたしの手首を放した。
涼村くんが握った箇所がほんのり赤くなっていた。
「ありがとう」
火照った顔を見られるのが恥ずかしくて顔を伏せたまま、あたしはお礼を言った。
涼村くんはなにもいわなかったけど、そのままあたしは続けた。
「かばってくれて、うれしかった」
まるでヒーローだった。
かっこよかった。すごく、すごく。
涼村くんはやっぱりなにもいわなかった。
なんでなにもいわないのか不思議に思ってそっと顔を上げて涼村くん見ると。
その瞳が、あたしを射抜いていた。
……え。
見つめ合うこと、数秒。
彼の1本の腕があたしに伸びてきて。
そっとあたしの頭を優しく包んで。
そのまま、彼に引き寄せられた。
髪に、顔に、その優しさが溶け込んで。
気づいたときには、あたしは。
彼の、心臓の音を聞いていた。



