「なにやってんの」
でも、そのとき。
あたしたちと安田くんとの間に、手が差し込んだ。
――ああ、来てくれたんだ。
第三者の登場に、女子の大多数は色めき立って。
男子の半数は息を呑んだ。
目の前の、安田くんさえ目を見張っている。
さっきとは明らかに違う雰囲気が、場を包んだ。
それは目の前にいる彼のオーラがいつになく静かで、ピリピリしてるからかもしれない。
安田くんと対峙している彼の横顔を見つめる。
いつもの整った顔が、鋭い目付きで安田くんをみていた。
――涼村くんだ。
涼村くんが、きてくれた。
「なに、涼村?」
さっきまで目を見張っていた安田くんは、涼村くんににこりと笑顔で問いかけた。
「お前ら恥ずかしくないの? あんな嘘ばっかりの噂間に受けて」
声だけでもわかるくらい、突き放すような冷たい口調だった。
あの時と同じ。
源さんたちから、かばってくれた時と同じ。
つい源さんのほうに目を向けると、すごい形相であたしを睨んでいた。
「なんで涼村がかばうの? お前、そいつにストーカーされてるんだろ?」
あたしを指差す安田くん。
人のことを指差しちゃだめって教わったことないのかこいつ。
「どっからそんな話になったかしんないけど、そんなの嘘だし」
「ふうーん。で?」
安田くんはにやにやしながら、涼村くんを下から覗きこんだ。
「紳士にかばってんの? さすが人気者の男の子は違うねえ」
嘲るような、小馬鹿にするようなそんな言い方。
なんなの、嫌なやつ。
こんなやつにこんなこといわれるの悔しい。
知らず知らず手のひらに爪が食い込んでいた。
「彼女をかばうって、当たり前じゃない?」
そんな挑発にのることもなく、毅然と言い放った一言は。
クラスの雰囲気を一瞬に変えてしまうくらい、大きな衝撃を与えた。



