放課後はキミと。



沈黙が再び訪れて。
涼村くんはあらぬ方を向いたままで。

変な空気だけが、あたしたちの間にあった。


「……あんさ」

その静寂を破ったのは涼村くんで。
強ばった声色に、あたしも身体が固くなる。
涼村くんは逡巡して、一度ごくん。と唾を飲み込む音が聞こえた。

「変な噂、流れてるみたいだけど……」

一瞬で頭が真っ白になって、
血液が逆流したかと思うくらい身体が熱くなった。
心臓が、えぐられたみたいだ。

ほんとは、なんとなく気付いてた。その話かなって。
だっていきなり誘うなんておかしいんだもん。

「そうみたいだね」
動揺したことも悟られたくなくて、心配かけたくなくて、必死に口角をあげた。
「……嘘ばっかりだったな」
不機嫌そうにつぶやいた涼村くんに、一瞬涙が出そうになってあわてて視線を下に落とす。


ああ、彼も信じてくれるんだ。

全部嘘だって。あたしのこと、信じてくれるんだ。


それだけで、十分だった。


「⋯⋯大丈夫! 人の噂も75日っていう……」
紗世にもいった強がりをいいながら目線をあげると、目の前に手が伸びてきていた。


え、このタイミングでデコピン!?

思わず後ずさりそうになったけど当然ソファに座ってるのでから逃げれるはずもなくて。


でもその手はそのまま、優しく頭を覆った。


ーーーーーえ!?


さっきとは違う意味で動揺してしまって、声がでない。
頭に乗ったその手は遠慮容赦なくぐしゃぐしゃと髪を撫でる。


……!?


え、あの、髪がぐしゃぐしゃになるんですが…!!


意図がわからず、なにもいえないままでいると、

「そんな無理して、笑わなくていい」

鈴村くんは不機嫌な声のまま、そういった。



その裏にある優しさに。

その裏にある不器用さに。

どうしたらいいのか、わからなくなる。



「あんな根も葉もない悪意たっぷりの噂流されて、大丈夫なわけないだろ」
彼の諭すような温かい言葉が、あたしの涙腺を再度刺激した。
自制する前に、そのまま手の甲に一粒、滴が落ちる。


そのとき、自分が思っているよりも傷ついてることを知った。


あんな好奇で悪意な視線、感じたことなかった。

クラスの女子は軽蔑の目で見ているかよそよそしいかだし、男子はなんだか嫌な目であたしを見ていた。
針のむしろってあんなことをいうんだって。
一日だけでも、きつかった。


「……うそって、しんじてくれるんだ」
絞り出した声は涙で震えていた。

涼村くんがどんな顔をしているかわからなかったけれど、次の瞬間頭をはたかれた。


……痛い。

女の子が泣いてるのに暴力ふるうなんて……。


「あんなあ、一応これでもあんたの補習担当してやってんだし、あんたがそんなことしないことくらい話してればわかるっての」
ぶすっという涼村くんに、心の中の非難は消え失せて。
襲ってくるのは、あのふわっと包み込んでくれる温かさ。