放課後はキミと。



少しして、涼村くんがトレイを持って歩いてくるのが見えた。
周囲が涼村くんをチラチラみていることがよくわかる。


存在が目を惹くってこういうことをいうんだなあ。

そんな人があたしといま一緒にマックに来てるなんてと状況を考えると信じられない。


涼村くんはあたしの向かいに腰掛けて、トレイを置いた。
マックシェイクを差し出されたのでお礼を言ってお金を渡す。
涼村くんはハンバーガーとポテトを頼んでいた。


「...いただきます」
「いただきます」
あたしが手を合わせると、それに合わせたかのように涼村くんも手を合わせてそういった。

ハンバーガーの包みをあけてかぶりつく涼村くん。
いつもはあまり見ないようにノートか教科書を見てるから、こういうときどこに目線をやればよかったのかわからなくなる。

睫毛も長いし、鼻筋も通ってるしなーって思っていると
「……なに?」
あたしの視線に気づいた涼村くんが気だるそうに聞いてきた。
「ほんとに綺麗な顔だなと思って」
思わずそういってしまうと、涼村くんは大げさなくらい目を見開けて……むせた。
「……え?は?なに急に?」
脈絡が無さすぎて動揺している姿は面白かった。

「あたしね、涼村くん苦手だったの」
シェイクをおいて、なんともなしにストローを弄ぶ。
「なんとなく知ってたけど」
「え、ほんとに?」
「あんた、俺のこと見るたびにいっやそーな顔してたし」
テーブルに肘をつき、顎をのせた涼村くんは、そのまますうっとあたしから視線をそらす。
「今は苦手じゃないよ」
言い訳のようにそういったあたしに、涼村くんは何も言わなかった。


……ナンダロウコレハ。

すねてるのかしら。まさかね。


「平々凡々なあたしからしたら、眩しすぎるってゆーか、妬ましいというか」
「ふうん」
「でも補習して、イメージと違ってて、反省した」
「……反省?」
そっと切れ長の瞳が戻ってくる。
戻ってきたら戻ってきたで変にどきまぎする。
「うん。あたしも、外見だけで判断してたなって。努力、してるんだなって」


思い出すのは、使い古されたノート。
あのノートの裏で、一体どれくらいの時間を費やしたのだろう。
スポーツが上手にできるようになるために、どれくらいの時間を費やしたのだろう。

顔がいい故にいわれてしまう僻みも入り混じった中傷を、彼はどれだけ聞いたのだろう。


「それに、あたしのためにまとめ作ってくれたりとか、かばってくれたりとか? 意外にいい人だなって」
笑いかけてみると、涼村くんは目を瞬かせたあと、口を引き結んでまた視線をそらした。
視線そらされたななんて思いながら、ストローを指で弾いた。
「だから苦手意識、どっかいっちゃった」
言い終わると訪れるのは沈黙で。


……なんか変なこと言ったかな。


不安になっていると、涼村くんが口を開いた。
「……俺も、誤解してたよ」
「え?」
「あんたのこと、誤解してた。いつも寝てばっかで先生とバカやって、遊んでたりしてるんだろって思ってた」
「まあ、普通の人はそう思うよ」
「――俺よりも、ずっと大人だった」

深くて吸いこまれそうな瞳があたしを包んだ。