その日の帰り道。
いつもは校門につくとさっさと家の方向に歩き出すのに、涼村くんは校門で止まった。
「……どうかした?」
思わず足を止めて問いかけてみるも、無反応。
彼にしては珍しく、目線を彷徨わせて不審だ。
……なんだろう?
頭にハテナを浮かべていると、涼村くんが意を決したのか口を開いた。
「あんさ」
「はい」
「お腹すかね?」
「…………はい?」
まさかの問いかけに、目を白黒させる。
涼村くんはポケットから、券を何枚か取り出した。
何かのクーポンにみえる。
「マックの割引券が、あるんだよね」
「……そーなんだ?」
「……うん」
ナンデスカネコレ。
もしかして、誘われてる…?
「お腹はすいた」
頭をフル回転させていたので、お腹自体はとてもすいている。
「じゃ、ちょっとだけ寄らね?」
もしかして、がドンピシャでどうしたらいいかわからなくなる。
噂のこともあるし、あんまり涼村くんと一緒にいないほうがよさそうな気もするけど。
言いづらそうに誘ってくれた涼村くんの誘いを断るのも気が引けるし。
あと……ちょっと離れたくないとか、思ったり?
「いいよ」
そして気づけば、あたしはうなずいていたのだった。
そのまま二人で並んでマックへ向かった。
マックは駅前にあるので、高校からは10分くらいの距離だ。
涼村くんと二人きりで歩くなんてなにを話せばいいかわからなくて。
涼村くんも何も話さなくて、ただ無言でマックへの道のりを歩いていた。
マックにつくと、18時を過ぎていたからか部活帰りの人たちが何人かいた。
でも制服を着ている人たちの中に、クラスの人はいなかったので少し安堵した。
人目につきにくいように奥のボックス席を選んだ。
「俺いってくるよ。なにがいい?」
カバンをおいた涼村くんに聞かれて、
「あ、じゃあバニラのSサイズのマックシェイクで…」
あたしは思わず、そう返してしまった。
涼村くんはオッケーといって、そのままレジへ向かっていく。
二人でいるところを極力誰かにみられたくなかったから、そういってくれてありがたかった。
席に腰かけて、一息つく。
よくよく考えたら、涼村くんと補習以外でこうして二人きりになることはコンビニのあの時以来で。
なにを、話したらいいんだろう。
そもそもなんで、涼村くんは誘ってくれたんだろう。



