放課後はキミと。



***


悪気なんて、なかった。


何度も何度も開いているのかよれているノート。
そこにあったのは、びっしりとした文字。
要点をおさえてまとめているのか、付箋があちこちに貼ってある。

ただそのノートに視線を落とす、あたしと涼村くん。


「…………」

「…………」

気まずい、沈黙。


これは、みてはいけないものだったのかもしれない。
ヒーローの裏側って、みられちゃだめだもんね。

そもそもなんでこんなことになったかというと。
簡単に言うとぶちまけちゃったんですよね。
涼村くんの、かばんを。

落ちてしまった消しゴムを拾おうとしたときに、机の上に置いてあった涼村くんのかばんを引きずっちゃって。

そのまま床に落ちてしまって。
運が悪いことに中身が結構飛び出してしまって。
まるであたしに見せるかのように、ノートが開いてしまったのです。

……だから、これっぽっちも、悪気は、ないのだけど。

ちらと涼村くんをうかがうと、まだ固まっていた。

「……ごめん」
とりあえず謝って落ちてしまったものをすべて拾う。
軽くはたいて、かばんにはいれていいかわからなくて、とりあえず机に置いていった。

涼村くんはなにもいわないままだ。


……エロ本みられたわけじゃないんだから、そんなに固まらなくても?

あんなに名前の通り涼しい顔しながら問題解いてる彼が、こんな努力してたらそれはそれで格好つかない?


「……ふっ」

想像したらおかしくなってきて、思わず笑ってしまった。
笑ってしまうと止まらなくなって、止めようとしても止まらなくなる。

横目で涼村くんをみると、それはそれは冷たい目をしていた。

「や、ごめ……。なんか落ち込んでるから、見られたくない理由を想像したら、面白くなって」
笑いをかみ殺しながらいうと、涼村くんはぶすっとした顔をして「落ち込んでない」と返される。

いや、どうみても落ち込んでたでしょ。

「努力してるとこ、見られたくないんだ?」
「…………」

仏頂面で黙り込む。
たぶん、図星だ。

「恥ずかしいことでもないのに。なんか安心したな、あたし」
「え?」
考えもしなかった言葉だったのか、彼の口がぽかんと間抜けにあいていて、それもおかしくてくすくす笑ってしまう。
「涼村くんも、人間なんだなあって」
「どういう意味」
「だってさ、涼村くん、完璧すぎるもん」
ゆっくり椅子に背をあずけて、涼村くんと目線を合わす。
「顔もいいでしょ、頭もいいでしょ、運動神経もいい。それでなんの努力もしてなかったら、怖くない?」
完璧ポイントを数えて、けらけら笑う。


劣等感を抱いていたあたし的には。

そんな彼の人間らしいところが見れて、ちょっぴり楽しくもあったりして。