放課後はキミと。



噂の正体を知った途端に、周りのあたしを見る目がどんな風かに気づいた。
女子は軽蔑の目を、男子は好奇心に満ちた目をしているんだ。

「えー……みえないけどなあ」
「でも人は見かけにやらないって言うしー」
「パパ活してるからいつもあんな眠そうなんだあ」
「お前やらしてくれっていってこいよ」
「やらしてくれっかなー?」

雑音だったはずのクラスメイトの声が、あたしの耳に突き刺さる。
知らず知らず、強く手を握り締めていた。


教室から、逃げ出したかった。
なにもなかったことにして、家に帰りたい。
意思に反して、足は動かないし、何も言葉を発することはできなかったけれど。

あたしが、恥ずかしいわけじゃないのに。
こんな事実無根の噂に、あたしがどうして恥をかかされなきゃいけないの。
どうして。

同時に思い出されるのは、彼女の後姿。
泣きそうな顔をして教室を飛び出していった、あの。

決めつけはよくないけれど、いやでもそうだと思ってしまう。
タイミングが、よすぎる。


「大丈夫、りん?」

感情にのみこまれていたあたしに、紗世の心配そうな顔が飛び込んできて、とっさに笑顔を作った。

「大丈夫。人の噂も75日って言うし」
それは、自分にも言い聞かせた言葉だった。

そう、大丈夫。
噂されてるだけなら、そのうち風化してくれる。

そう思いたいのに、嫌な感触が消えなくて、ズキズキと頭が痛む。

「私は、全部嘘ってわかってるから」
力強くそういってくれた紗世にどのくらい救われたか。
うん。と消え入りそうな声で答えると、予鈴が鳴った。

みんながなにもいわず席に戻っていく中で、あたしは涼村くんの席に目を向けた。
涼村くんはたった今来たばかりなのか、カバンを机の上に置いていた。


……涼村くんは、聞いたのかな。この噂。
今来たばかりなら、もしかしたらまだ、知らないのかもしれない。

どうかだれもあの噂を彼の耳に入れてませんように。
小さく、それだけを祈った。