学校に行く時から、なんとなく違和感はあった。
ヒソヒソと違うところで話されているし、なんというか、善意ではなく悪意の視線も正直あった。
「……え?あの子が?」
「そんなことしてる人ってほんとにいるんだ」
漏れ聞こえてくるのはそんな会話だ。
……これはもしかしなくても。
嫌な予感を感じながら、足取りが重くなって学校に向かった。
教室に向かう途中でも好奇の視線や悪意の視線は消えてなくて。
足をからめとられるような感覚に襲われながら、ゆっくりと教室の引き戸を開けた。
……よく、あるよね?
だれかが入ってきたその瞬間。
空気が、一瞬凍っちゃうような。そんな、シーン。
それが今、目の前で起きた。
一瞬、時が止まった。
まるであたしだけが異世界に迷い込んだみたいに。
でもそれはまばたきをすれば、何事もなかったかのように動き出す。
一瞬漂った不穏な空気を気にしていない風を装って席に向かう。
席に座るけれど、消えない視線の嵐。
机から目をそらすことが出来ず、ただじっと何の変哲もない木材を見ていた。
「おはよう、りん」
何も考えず下を向いていたあたしに声かけてきたのは、紗世だった。
ゆっくり顔をあげる、。
紗世の顔はいつもより暗くて、元気がなかった。
「おはよ」
あたしは紗世が声をかけてくれたことにホッとした。
「大丈夫? なわけないよね」
紗世はあたしの顔を見て察してくれたようで、ぽんとあたしの頭を撫でてくれた。
そんな時でも、事の成り行きをみてるであろう視線があたしに突き刺さって、胸が張り裂けそうなくらい痛くなる。
「私に流れてきた噂は、全部否定しといたから」
それが、一体どんな噂なのか。
知りたいし、知りたくない。
あたしを傷つけるためだけに流されたであろうその噂に、なんであたしが振り回されなきゃいけないのだろう。
「どんな噂か、聞いた?」
胸が、軋む。
小さく首をふる。
「聞きたくないと思うけど、知っておいたほうがいいと思うからいってもいい?」
紗世は逡巡しながらやさしくそう聞いてくれて、ゆっくりうなずいたあたしの耳元に近づいて、小声でその噂をいった。
「パパ活してるとか、涼村くんのストーカーしてるとか」
――――!?
覚悟していたはずなのに、その衝撃は予想以上で、瞬時に頬が熱くなる。



