「……最近、深月と補習してるんだって?」
今度は神田さんが机によりかかって、細長い目を吊り上げて聞いてくる。
……どっから漏れたんでしょうか。
教室でやってるからみられたのかな。
「はあ、まあ」
嘘をついてもばれそうなので認めてしまうと、ギロリと三人ともに睨まれた。
ひぃい。こわいいぃ。
蛇に睨まれた蛙はこんな気持ちなのかもしれない。
「はあ、まあじゃないっての!」
「なんで補習なんかしてんのよ!」
「どうせうまいこと言ってとりいったんでしょ!」
口々に言葉を重ねる三人は言い訳の余地を与えてくれない。
あたしのせいじゃないのに。
担任のせいなのに。
そんなこといわれてもしらない。
てかこのご時勢にまだこんなことする女子いるんだ。女子こっわ。
なにもいわず呆然と立ち尽くすあたしに、
神田さんがイライラしたように前髪をかきあげる。
恋する乙女というよりは、完全に肉食女子のタイプだ。
「なんとかいったらどーなの」
再度そういって、三人ともがあたしにずいずい近寄ってくる。
手のひらを前に出して三人との距離を保ちながらあたしも少しずつ後ろに下がる。
このままでは壁ドンをされてしまう。
「……えーと、あたしに、どうして、ほしいんでしょうか」
とりあえず希望を聞いてみると、神田さんがにっこりと口角をあげた。
もちろん目は笑っていない。
「んなの、決まってるでしょ。補習、今すぐやめなよ」
「いや、それは先生が決めたことなんだけど……」
「別に深月じゃなくたっていいでしょ」
手を壁の横につかれて、とうとう追い詰められてしまった。
神田さんが使ってるであろう香水が強く鼻にささる。
たしかに涼村くんじゃなくても、いいんだけども。
「……でもそれはあたしにいうより、涼村くんにいってほしい、です」
ささやかな希望を述べてみると、神田さんの眉間の皺がきつくなった。
「あんねえ、穏便にコトを済ませようとしてるんだから、あんたはいうこと聞いときゃいいのよ。わかる?」
どうやっても穏便にすまないと思うんだけど…。
え、どうしよう?
今三人をこの場で納得させるには、やっぱり涼村くんとの補習を終わらせるしかないんだけど…。



