放課後はキミと。



「……例えばさ」
涼村くんはふいに首を傾げて、あたしに話しかけた。
「あんたと同じ家庭環境のやつがいて、それでそいつが大学進学を選ぶかあきらめるかって、半々くらいだと思う」


うん?
話が思わぬ方向にいってついていけなくなる。


「少なくとも、俺があんたなら大学進学をあきらめてると思う」


……そうかな?

彼はあたしの目をまっすぐに見つめて、その切れ長の瞳を細めて。


「でもお金の問題に負けないで、精一杯立ち向かってるあんたって、俺はやっぱりすごいと思う」
見たことのない、優しい顔をしていた。


――セカイが、止まった。

彼の優しい顔だけが鮮やかで、ほかの景色はおぼろげで。


瞬間、脈打つ鼓動。
初めての症状。耳朶の奥まで、響いてる。

脳がぐわんぐわんと揺れてる感じがする。

な、なんか出てる気がする……!!


「うまくいえないけど、俺だったらきっと諦めてる。現状を受け入れて、まあしゃーないか。なんて思って」
だからさ、と彼は優しく続ける。
「やっぱり大学に行きたいって思って、がんばってること否定しなくていいってか、そんな自分褒めていいんじゃない?」

ふわりと心が抱きしめられたようだった。
覆いかぶさって、まるでよしよしと頭を撫でられてる、そんな錯覚。

あったかくなって、どこか恥ずかしくて。

「……なんか俺、恥ずかしいこと言ったな」
完全に固まったあたしに、涼村くんはあたしの視線を避けるように顔をそむけた。
その耳は、あたしの目から見てもほんのり赤い。


……なんだかとっても恥ずかしいんですが!!


しばしの沈黙が流れて、なぜか空気中に漂う甘い空気に耐え切れなくなったのはあたしだった。

「あ、ありがとう。そういってもらえたのは、初めて、です」
ごにょごにょ消えていく語尾。


でも単純に、うれしかった。
そんな風に受け止めてもらえるのは。

やっぱり、嫉妬、してたのかな。
不自由ない生活を送れるみんなに。

あたしはこんなに頑張ってるんだよって。だれか認めてよって。
思ってたのかな。

だって、涼村くんが認めてくれてこんなにうれしい。

同情する目じゃなくて。
きちんと、あたし自身の決断を、頑張りを、認めてくれた。