「あ、そうなんだ。なんかただならぬ関係だなあって思って」
ただならぬ関係…ただのクラスメイトの立ち位置とはたしかに言い難いけど…。
「そういや卯月さん、英語のテストやばいっていってたもんね」
店長は何の気なしの世間話を思い出したのかそういった。
「そうなんです……」
「いってくれたらバイト調整したのに」
店長は肩をすくめる。
「君、最近何回かきてたよね。卯月さん、見に来てたの?」
突然のフリに、涼村くんはああまあとかなんとか濁していた。
……涼村くん、来てたんだ。
少し、びっくり。バイト先にまで来るなんてよほど信用されていないのか。
「卯月さん、いいこでしょ? えらいよね、家のためにバイトなんて」
そんなあたしたちに構わず、店長はまたもや爆弾発言を繰り出した。
きゃああああやめてええええええ!!!!
店長は優しくて話しやすいけど、たまにこういう無神経な発言をする。
そして今、それは炸裂してほしくなった。
涼村くんがその言葉に、わずかに目を見開いた。
切れ長の瞳があたしを捕らえる。
うわあ、そんな瞳で見ないでえ!!!!
「…そうですね、勉強もとても熱心にやってくれてます」
深くは聞かず、店長に愛想のいい笑顔を浮かべていた。
その笑顔は嘘臭すぎて、あたしの背筋にヒヤリと冷たいものが落ちる。
こわいんですけど。この人こわいんですけど。
「でも卯月さんも役得じゃない、こんなイケメンに見てもらえて」
店長は、このっこのっ。とでもいうように肘でつついて茶化してくる。
とりあえず店長には黙ってほしい。
「はあ、まあ」
一刻も早く終わらせたくて、適当に濁す。
その場に沈黙が訪れて、涼村くんはあたしにそっと問いかけてきた。
「今日、何時に終わるの?」
「22時です……」
「そっ。がんばってね。んじゃ」
涼村くんはぴったりお金を置いて、ポテチを持って帰った。
去っていくその背中を見送ったあと、緊張が抜けて力が抜けていく。
ゆっくり息をして、横にいる店長をキッと睨んだ。
「店長、余計なこといわないでくださいよ」
「あれ? 俺なんかいったっけ?」
数々の無神経発言を言った自覚もない店長に心底ため息をつきたい気分だった。
涼村くん、気にしてなかったらいいな。
あんまり人にどうこういわれるのは、好きじゃない。
その後なんとか適当に仕事をこなしていたら、いつのまにか上がる時間だった。
なんか、今日は疲れた。
涼村くんの姿がちらちら頭によぎって、次会うのがとても気まずい。