夏の日の夜のこと。
縁日である女児の声がふと耳に入った。

「かわいい指輪。ママ買って」

飴玉の様に輝くピンク色のそのプラスチックは、子供の目から見ればまるで一流の職人が磨き上げた高級品だ。

「ダメよ。さっきりんご飴を買ったでしょう」
母親は浴衣姿の娘に優しく話しかけた。

「そうか」
僕は呟いた。

指輪をねだるその声に、聞き覚えがあったのだ。

りんご飴の屋台。
僕の2〜3人ほど前に並んでいたのがさっきの母子だった。

蛇のように長い行列を、小さな子供が静かに待つのは難しい。
お祭りの賑やかさの中でも、その可愛らしく甲高い声はよく響いた。

割り箸に刺さったりんご飴。
それを買うまでの間、流行りのアニメキャラクターについて、僕はすっかり詳しくなった。

そもそもお祭りというものは、1人でやって来るところではない。
カップル。家族。友人同士…。
誰かと連れ添ってやって来る。