なぜ、彼は出前アプリで注文しなかったんだ。

肩を落とした私は、今頃「遅い」と悪態をついているであろう男の顔を思い浮かべる。



───事の始まりは1時間前。まごころ屋に掛かってきた一本の電話だった。

"お電話ありがとうございます。まごころ屋です"
"・・・青山?"
"え"っ・・・この声はまさか、"
"あー、丁度良かった。お弁当、届けてくんない?"

丁度手が空いていた私が電話に出ると、相手はまさかの天音さんだったのだ。私の声だと直ぐに分かったらしい彼は、早速お弁当の注文をしてきた。

確かにテイクアウトも出来るとは言ったが、まさか本人自ら電話を掛けてくるだなんて。出前アプリをおすすめした意味は何処へ。