(私は、天音くんのことが好きなのだろうか)

きっとそんな悩みに対して、同年代の女の子たちは「付き合ってから好きになることだってあるよ」と返すのだろう。確かにそれも大切なひとつの意見だ。否定はしない。

けれど、真剣に好きだと告白してくれた天音くんと、そのような考えで付き合うのは私が嫌だ。ちゃんと真剣に考えぬいた答えを導きたかった。

ふと店の前を通った金髪の男性に、ふと頭に思い浮かんできたのは夏樹くんの顔。きっと、くよくよ悩んでいる私を見たら「今すぐOKの返事しなよ」と言ってきそうだ。

「ダメだ、考えすぎてハゲそう」
「あらあら、どうしたの三鈴ちゃん。そんな顔して」

お茶とお菓子をお盆に乗せて、可奈子さんが現れた。「お客さんいないうちに食べちゃって」と彼女は私にお盆ごと渡す。年末年始に九州に旅行に行ってきたそのお土産らしい。明太子のおせんべいとひよこの形をしたお饅頭だった。