「はぁ?!何であんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ」
「・・・なるほど。天音くんは私を女子枠だと思っていないわけか。ふむふむ」
「っ〜〜だから!さぁ!ちょっと、夏樹もなんとか言ってよ」

言い合う私と天音くんが千堂さんに目を向けると、彼は「あはっははは・・・ふふっ・・・ふはっ」と床で笑い転げていた。芸人ばりのそのリアクションに驚いて「千堂さん・・・?」と声を掛けてみるが、耳に届いていないようで笑いっぱなしだ。

「・・・夏樹、笑い上戸なんだよね」

結局千堂さんは私たちが楽屋を後にするまでずっと一人で笑い続けていた。

最後に「僕のことは夏樹でいいよ」と下の名前で呼ぶようにと告げて、連絡先まで交換することになった。あとで改めて舞台の感想を送ろう。

「ほら、さっさと行くよ」
「じゃあまたね、三鈴ちゃん。いっぱい光春に美味しいもの奢ってもらいな」
「はい!ありがとうございます」

天音くんが予約してくれたお店までの道中。すっかり千堂さんの虜になった私は、軽い足取りで天音くんの隣を歩く。横から「転んでも知らないから」とお小言が飛んでくるが、本当に数十秒後に現実になるとは浮かれていた今の私は知らない。

ちなみにその後、ちゃんと天音くんの叩く力は少し弱くなっていたり、いなかったり。