それはそうと今大事なのは自身のプライドよりも、深々と腰を折った私の頭上にぴらっと掲げられた一枚の紙切れである。その価値がどれほどのものか、数週間前に思い知ったところだった。

『舞台 新選組~誠が導く我らの道~』

天音くんの手にあるそれは、間違い無く私が抽選で外れた舞台のチケットだった。
まさにゴクリと喉から手が出るほどの代物である。

だって誰のファンクラブにも入っていない私は一般先行で応募するしかなくて、第3希望の日時まで1週間も吟味したのに、結果は呆気なく落選。海も渡る気満々だったのに、神様は私に恵んでくれなかった。キャスト先行がどれほど有利なものか思い知らされたばかりだったのだ。

チケットをご用意できませんでした、と連絡が来た時はその悔しさから珍しくジャンクフードを爆食いした。その後の胃もたれも免れなかった。その後数日肌が荒れて、それを見かねた天音くんが高級化粧水をプレゼントしてくれたのが懐かしい。