彼が口づけたのは、唇の真横だった。 唇には触れていないが、そこにはしないという約束を破られたような気分。 なのに、少しも怒っていない私。 怒るどころか、いつもより長くても押し返すことなく、目を閉じたままでいた。 ……胸の奥が大きくうずく。 私はその痛みの名前を知っている。