何が何でも阻止しようとする私が面白いのか、彼の口元は意地悪に笑っていて。
それがまたムカつくから、押し返す腕にめいっぱい力を込めていたのだけれど。
「ほら、もうてっぺんだから」
彼がそう言って、先に到達した前のゴンドラに目を向ける。
“てっぺん”
その言葉で同じように見ると、
「しんどい場所なんだろ? 俺が塗り替えてやるよ」
まっすぐな瞳で見つめられた。
「……」
強引な優しさに触れ、腕の力が緩む。
話を聞いてくれていないと思えば、実はしっかり聞いていたり……。
冷たい人に感じても、時折り、優しい顔を見せてくる。
自分のことを守っただけと言った後で、走って守ろうとしてくれた。
本当のキングはどれなんだろう。
「――これ、明日の分だからね」
怖いことをする人なのに、怖いと思えない自分がいる。
まだ何も知らないのに、私は神様でも仏様でもないこの人に頼ろうと思ってしまう。
本当に塗り替えてくれそうな気がして、私はまぶたを下ろした。



