別れさせ屋に依頼をした私の結末

「……知り合いなの?」

たずねると、彼は少し考えるような間を置いてから、口を開いた。

「2カ月前のターゲット」

「……やっぱそうなんだ」

そんな気はしていた。

会話に“アズミ”という名前が出たとき、キングの元カノの話かなと思っていた。けれど、キングと小声で話す間、耳には怒っている男の声が届いていて……。

何度も「お前のせいで別れた!」と叫んでいるから、「もしかすると」と考えていた。

キングは話を広げることなく、商店街の通りに目を向ける。

「そこの道、左に曲がってまっすぐ行けば駅だから」

道の説明を受け、指さす先に自然と目が向いたけれど、ここで解散するかのような言葉に疑問が浮かんだ。

「どこかに行くの?」

てっきり駅までは一緒だと思っていたから、

「さっきのヤツの連絡先知ってるから、呼び出して話をしてくる」

「え!?」

わざわざ自分の方から会いに行くと聞いて、耳を疑った。

「逃げた意味ないじゃん!!」

さっきの過酷な逃走劇は一体何だったのか。

無駄に走っただけのように感じて文句を言うと、彼は言う。「いやいや、俺ひとりで3人相手は無理っしょ」と。

「あの場で水城に何かされたら、ちゃんと守れないからさ。逃げた意味はあるよ」

「今行っても、相手3人のままだよ!?」

逃げたのは私を守るためだった。

そう言われても、今からあの人たちと会うことに賛成はできない。

心配で、引き留めようと腕を掴んだ。

すると、彼はその手を見下ろし、フッと笑みをこぼす。