「依頼達成の日まで、1日1キスね」

唐突な頬へのキスと、わけのわからないルールを突きつけられる。

「……“1日1キス”?」

どうしてその言動に至ったのか、全く理解できない。

困惑していると、キングは「あ、意味わかんない?」とたずねてきた。

うんとうなずけば、今度は、

「“毎日1回、俺とキスをする”ってこと」

略さずに、言葉を噛みくだいて説明してくる。

「っ、言い直さなくても言葉の意味はわかるよ! ……そうじゃなくて、なんでそんなことしなくちゃいけないの?」

的外れな返答に、眉根を寄せる私。

「“なんで”って……“依頼報酬”だから?」

「だから! なんでそれが依頼報酬なの!?」

「いいじゃん、こんなイケメンと毎日キスできるんだから」

「よくない!」

全然話が通じなくて苛立ちが募る。

感情的な物言いになっていることに気づいて、私はひと呼吸置いてから、もう一度言う。

「……嫌です。キスなんてしたくない」

キングは慣れてそうだし、キスなんて誰とでもできてしまうのかもしれないけれど。私にとってそれは、とても特別な行為だ。

好きになった人としかしたくないし、ましてや、初めてのキスには憧れだってある。だから、さっきの頬へされたことも、キスだと思いたくない自分がいる。