「こんくらいで見失うなよ」

呆れた口ぶり。けれど、その瞳の色はとても優しくて。

「水城は、相手が“親友”と思わなきゃ“親友”をやれないわけ? ……そうじゃないだろ? 相手がどう思ってようと、自分が親友だと思うんなら、そのまま“親友”やってればいいんだよ」

キングの言葉は、美奈から拒絶されて傷ついていた心には、深く刺さる。

私は指ではじかれたおでこを手で覆ったまま、その声を素直に受け入れていた。

「これまで色んな依頼を受けてきたけど、水城みたいな子は珍しいんだよ」

その言葉を皮切りに、キングはこれまでの依頼を振り返る。

「みんな、大体自分のことで頼んでくる。……“あの人と付き合いたいから、今の彼女と別れさせて~”とか、“元カレがしつこいから助けてください”とか……」

指折り数えるようにして言った後、彼は私に目を向けた。

「俺、最初は“水城もそんな感じだろーな”と考えてたんだよ。けど、違ったじゃん」

そう言われて思い出したのは、昨日の図書室で「本音で来い」と言われたときのこと。

あのときのキングは意地悪そうに笑いながら、私の気持ちを確かめにきていた。

「友達のことで必死になってて。……ま、“他人のことに口出すのはいいのか”って話になったら、よくないことかもしんねーけど」

キングは柔らかな表情を浮かべて、微笑みかけてくる。

「少なくとも俺は、あのときの“本音”ってやつは“いいじゃん”と思った」

あのときの、キングの言葉は半分当たっていたのに。