図書室を出ると「校門で待ってて」と言われ、相良くんは別行動をとった。

靴箱がある北館の正面玄関では見かけなかったのだが、彼はどこかで靴を履き替えたのだろう。スニーカーを履いて外に現れたのだ。

「どこに行くの? 相良く……」

「この姿のときはその名前で呼ばないでほしい。一応、あれは変装だから」

黒髪のほうを変装と言う。ということは、こっちの派手なほうが本当の姿ってこと?

質問にも答えてもらえず、ただただ後をついていった私。

彼が足を止めたのは、学校の最寄り駅から歩いてすぐのアミューズメント施設だった。

ネットカフェからカラオケ、ゲームセンターなど、様々な娯楽が入った大きなビル。立ち寄ったことは一度もないけれど、クラスの子たちがここに寄り道をしたという話は何度も耳にしたことがある。

エレベーターに乗ると、キングは迷うことなく5階のボタンを押した。

着いた先は、全国にチェーン店があるコーヒーショップ。

何も説明されないまま、私は彼の後ろに並んでレジにいる店員にココアを注文した。

「あ、お金……」

「いいよ、こんくらい」