別れさせ屋に依頼をした私の結末

「謝るのは、私のほうだよ」

ずっと不安だった。

いつかマチのほうを見始めるんじゃないかとおびえ、大樹の口からマチの話が出るたび、機嫌を損ねていた。

怒れば、大樹は私との仲を修復しようと必死になってくれる。私のほうを向いてくれた。

そんな手で大樹の隣に居続けたけれど、それって……いい彼女じゃないよね。

「……話さなきゃいけないことがあるの」

電車の中で考えていた。言わなくてもいいのかもしれない、と。

マチにはもう相手がいる。

大樹は失恋したのだから、わざわざ自分がしてきたことを伝える必要なんてないのかもしれないと、わずかに期待してしまった。

でも、今の大樹を見てわかった。この人の中に、私への恋心なんてものは、もうないんだなって。

「……あ、じゃあ乗る?」

大樹は、昨晩の言葉を思い出したようで、夕空に大きく咲いた観覧車を指でさす。

“最後、観覧車に乗りたい。……そこで聞いてほしいことがあるの”

昨晩の電話で、私は大樹にそう告げていた。

乗ってからすぐに打ち明けるつもりだった。これまでについたウソを。

“わかった。最後は観覧車に乗ろう”

快くうなずいてくれた大樹に、ホッとしていた私。もしかすると、許してもらえるんじゃないかと甘い考えまで抱いた。