トイレの手洗い場で、濡れた手をハンドタオルで拭きながら、鏡の中の自分を見つめる。

重ねたのは1年前の私の姿。

あの頃も、こうやってよく鏡を見ていた。毛先が肩にかからない髪の長さに、もどかしさを感じながら。

“ポニーテール似合ってる”

さっき言われた言葉、あの頃の私なら飛び跳ねて喜んでいただろう。

当時は、好きな人も誰かに恋をするなんて考える余裕もないくらい、自分の気持ちしか見えていなかったのだから。


──昨年の私は、岡垣くんに恋をしていた。


2学期になって間もない日の席替えで、隣同士になった私たち。

「も~ズルい! また窓際? 今度は1番後ろだなんて。マチの運のよさ、本当にスゴすぎるぅ……」

席を移してから迎えた休憩時間、真っ先にと私の席へ歩み寄ってきた美奈は、プクッと頬を膨らませて羨ましがっていた。