マチは私の表情をじっと見つめた後、目をそらした。
「最近の美奈、ちょっと苦手。……これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ」
「……マチ」
この状況で、彼女が口にしたのは大樹のこと。
苦手な男子との交流を嫌がるよりも先に、この子は真っ先に大樹の心配をする……。
何も言えなかった。
そんな私に呆れた表情をして、彼女はこの場から去っていく。
「……」
置いていかれた私は、一点を見つめたままぼう然と立ち尽くしていた。
「松山……」
寺尾が顔を覗き込んでくるけれど、マチから言われたことを考えると、目は合わせづらい。
「あ……、俺、戸締りして……鍵返してくるよ」
「ああ、悪ぃ」
私のカバンを取りに行って、教室の戸締りをする並木。
彼が職員室に行ってる間、寺尾とふたりでいたけれど、私たちはひと言も交わさなかった。
“遊びに行くこと岡垣くんは知ってるの?”
……知らないよ。言ってないから。
“これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ”
そんなふうに考えたことなかった。
クラスの人気者と仲良くなれば、マチもクラスの子たちに馴染めるかも。そう思っていたから。
「最近の美奈、ちょっと苦手。……これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ」
「……マチ」
この状況で、彼女が口にしたのは大樹のこと。
苦手な男子との交流を嫌がるよりも先に、この子は真っ先に大樹の心配をする……。
何も言えなかった。
そんな私に呆れた表情をして、彼女はこの場から去っていく。
「……」
置いていかれた私は、一点を見つめたままぼう然と立ち尽くしていた。
「松山……」
寺尾が顔を覗き込んでくるけれど、マチから言われたことを考えると、目は合わせづらい。
「あ……、俺、戸締りして……鍵返してくるよ」
「ああ、悪ぃ」
私のカバンを取りに行って、教室の戸締りをする並木。
彼が職員室に行ってる間、寺尾とふたりでいたけれど、私たちはひと言も交わさなかった。
“遊びに行くこと岡垣くんは知ってるの?”
……知らないよ。言ってないから。
“これじゃ、岡垣くんが可哀想だよ”
そんなふうに考えたことなかった。
クラスの人気者と仲良くなれば、マチもクラスの子たちに馴染めるかも。そう思っていたから。



