2学期を迎えてからの、ある日の放課後。

「帰んねぇの?」

誰もいない静かな教室でスマートフォンを触っていたら、突然声をかけられた。

顔を覗き込んできたのは、クラスメイトの寺尾(てらお)。人当たりがよくて、誰とでもすぐに仲良くなれてしまう、クラスの人気者。

「うん。友だちを待ってて」

「水城?」

「そう。靴はまだ学校にあるんだけどね~。一体、どこにいるんだか」

今朝、マチは「放課後は用事があるから」と、別々で帰りたがっていた。

でも、私の委員会がある日、マチはいつも待ってくれていたから、今日は私も待つつもりでいるんだけれど、連絡してもメッセージには既読すらつかない。

小さくため息をつくと、寺尾は前の席に腰を下ろす。

「前に教えたゲーム、もうやった?」

「あー、一応アカウントは作ったんだけどね。なんだか難しそうで、やってない」

最近、寺尾と話すことが増えている。

私が前にやったことがあったゲームの話をしたら、寺尾はそれをずっとやってるみたいで、その話で盛り上がり、一気に仲良くなった。

「やり方を覚えたら簡単だよ。ちょうどいいから今教える!」

「え、帰らないの?」

「ひとりで待つのって暇じゃん? 水城が来るまで遊ぼーぜ」

話すようになって、寺尾がみんなから好かれる理由がわかった気がする。

さりげなく優しいんだよね。