その瞬間、

「……」

穏やかだった彼の顔つきが一変して、真面目なものになる。

「え、まさか……」

引いちゃった? ジョーカーを。

表情を読んで、悪い想像が浮かんだのだが……。

「いや」

彼は手にしたカードをひらりと返し、裏の絵柄を私に見せてきた。

「俺の優しさに感謝だね」

引いたのは、ハートのA。追加で増やしてもらったカードだった。

ホッとして息をつく私。

広げていたカードをひとつにまとめる彼は、ケースの箱にそれを戻してから、まっすぐ私を見る。

「それじゃあ聞きましょうか、理由とやらを」

椅子の背もたれに体を預け、両腕を組む。

そのえらそうな姿は、本当に王様のようだった。