「え……、すっげえ怒ってるけど」

「ううん。あれで喜んでるの」

「……喜んでるようには、見えないよ?」

顔を背ける美奈と、必死に機嫌をとろうとする寺尾。何も知らない並木からすれば、ふたりの状況は険悪なものに見えるのかもしれない。

でも、私は美奈と毎日恋バナをしてきた。

寺尾への想いが日に日に強くなっていたのに、岡垣くんと別れたばかりだということを気にして、時間が経つのを待っていたこと。

突然寺尾からメッセージがきたことや、夜に電話をするようになったこと。その頻度が増えてからは、控えなきゃと我慢するようにもなっていたこと。

そして、1年のとき寺尾と同じクラスだったという別クラスの女子が、最近、うちの教室まで通うようになっていて、寺尾のそばに入り浸っていること。

美奈はそれらひとつひとつに一喜一憂していた。だから……。

「ほらね」

寺尾が歩み寄って美奈を抱きしめても、私は全く驚かなかった。やっと素直になった彼女に、にんまりと口元をゆるめるだけだ。

「ええ……。ホントわっかんねーなぁ、女心」

並木にとっては急な展開だったのだろう。

理解できないというかのような表情で、頭をワシワシとかいている。