「――やばっ」

「うわ、遅刻じゃん!」

ベンチで泣いていた私たちは、スマートフォンの時刻を見て、慌てて学校へと走り出す。

「わっ……」

転びそうになって掴んだ腕。

掴まれたことで態勢を崩して、同じように転びかけた美奈。

「もう、マチ! 引っ張らないで!」

「ごめんっ」

自然と笑みがこぼれていた。


学校に到着すると、靴箱の前も、廊下も、がらんとしていて。

急いで靴を履き替えていると、美奈が声をかけてくる。

「マチの好きな人のこと聞きたいから、今日、お昼……一緒に食べない?」

少し気まずそうにしながら誘ってくる美奈に、私は微笑みかける。

「……いいよ。コイバナしよう」

やっと元に戻れた。

今日のお弁当は、きっとおいしいと思う。