「今日は指」

そっと唇を離した彼は、赤面する私に意地悪な笑みを見せてきた。

「……心臓に悪いから」

文句を言いながらも、唇じゃなかったことに物足りなさを感じてしまう。

「腹減った。もうこんな時間じゃん」

先に図書室へ入って時計を見上げた彼を、じっと見つめる。

“わかりやすいね、水城って”

あの言葉……。

キングはもう、私の気持ちに気づいているのかもしれない。

気づいているのだとしたら、こんなキスは……。

胸に広がる、痛み。

向かいの席に腰かけた私は、複雑な気持ちを抱えながら、ご飯を食べていた。



――その夜、夕飯を食べていた私のそばで、突然、スマートフォンが鳴り響く。

【急にごめん。】

【話したいことがあって、今、水城の家の近くにいるんだけど】

【出てこれる?】

時間をかけて3通のメッセージを送ってきたのは、岡垣くんだった。