「どこから聞いてたの?」

「全部。……ふたりで教室から歩くのを見かけたから、そこから知ってるよ」

「そっか。なら説明する必要ないね」

人で溢れている西館1階の食堂を通って、階段をのぼる私たち。

3階に着くと、それまで口数が少なかった彼は、

「混乱してるみたいだから、話をまとめるけど」

と、さっきの私たちの会話を振り返る。

「オカガキが好きだったのは、マツヤマじゃなく水城だったみたいね。オカガキのことを好きだったマツヤマは、オカガキ本人がそのことに気づく前に手を打って、自分と付き合うように仕向けた。そんで――」

「もういいよ、その話は」

これ以上聞きたくなくて、声をさえぎった。

まとめられても、混乱した頭は整理されない。

「“手を打つ”とか、“仕向ける”とか、そういう言い方しないで」

なんだか、美奈が悪者だと言うかのような口ぶりだった。

“私は親友なんかじゃないよ。……ずっとマチのことを裏切ってたから”

脳裏に浮かぶさっきの彼女も、同じように言っている。

でも、私は……。

「“親友じゃない”って……。じゃあ、何だったの?」

聞けなかった言葉が、今になって口からこぼれた。