「――キングはなんでこんなことをやってるの?」
ふと思った。そんな生活を送ってまで、別れさせ屋をするのはなぜなのかと。
今回で言えば、依頼を引き受けても、キングにとって得になるモノは何も入らない。
つまり、タダ働きだよね?
不思議に感じてたずねると、キングは目を伏せたままズズッとカフェオレを飲み切る。
そして、私を見つめ、にんまりと微笑んだ。
「何、俺に興味を持つなんて。好きになった?」
「っ!」
図星をつかれ、すぐに言葉を返せずにいると、
「なるほどね~。だから見てたのか」
私の行動を納得したというかのように、うんうんとうなずいた。
「ち、違っ……」
違ってはいないけれど、まだ気持ちを知られたくないから急いで否定をする。
でも、そんな返事は彼の耳には届いていないようで。
「人がいるし、向こうに行こっか」
キングは貸出カウンターで昼食をとっている図書委員に目を向けてから、本棚のほうを指で差す。
「え、何、ちょっと待って」
「いいからいいから」
先に立ち上がり、座っていた私の手首を掴んでくる。
強引に引っ張られるまま後をついていくと、彼は私の体を本棚に押し付け、顔を近づけてきた。



