別れさせ屋に依頼をした私の結末

「てか、今日は一体どういうつもり?」

「……“どういうつもり”って?」

急に話題が変わって、言いたいことが読み取れず、ぽかんとする。

彼はそんな私に小さくため息をついた。

「休憩ごとに、こっちのクラスを覗いてたろ? 朝だってそうだ」

「あ、やっぱ……気づいてた?」

「気づくも何も、露骨に俺のことを見てたじゃねーか」

午前中の私は、何度もC組の前で休憩を過ごしていた。

スマートフォンを触ったり、外を眺めるふりをしながら、その場所から見える黒髪のキングを観察していたのだ。

教室にいるときは本を読んでいたし、トイレへ行くときも一切私を見ていなかったから、気づいていないように感じていたが、やっぱり前髪の向こうからこっちを見ていたらしい。

「ああいうの、やめろ」

ため息まじりに言われ、本当に嫌がっているのが伝わってくる、

「……思ったんだけど。もうさ、相良くんと私が友だちって状態になればよくない?」

さっき、わざわざ姿を変えてここに現れたのを見て、考えていたこと。

ふたりともクラスでは目立たない方だから、一緒にいても、周りはおかしいと思わないはず。

「そうすれば、この時間も着替える必要なんて……」

「よくない」

いい案だと思ったのに、キングは考える間もなく、ばっさりと切り捨てる。

「なんで?」

「男と女が一緒にいれば、嫌でも目立つだろ。これやってる間は、目立ちたくないから」

これ、とは別れさせ屋のことを言っているのだろう。

確かに、昨日みたいに別れさせ屋を探す人もいるのだから、普段は別人として暮らしたい気持ちもわからなくはないけれど。