別れさせ屋に依頼をした私の結末

どうしよう、何か言った方がいいのかな。

沈黙に耐えられず、この空気を和らげる言葉を探していた。

そのとき――

「……!」

岡垣くんの後ろを、黒髪姿の彼が通り過ぎた。

猫背な態勢で、うつむいてとぼとぼ歩いている彼は、一度もこちらを見ずに、C組の開けっ放しのドアから教室に入っていく。

「……水城?」

「あ、ううん、なんでもない」

見入ってしまったことで、岡垣くんから首を傾げられた。

慌てて平静を装うけれど、私の意識はもうC組の中へ向いてしまい……。

「私、そろそろ……トイレにも行きたいから」

「ああ、ごめん。……俺も教室行くわ」

岡垣くんとの会話を終わらせる。

一度、自分の席にリュックを置いて、トイレへと向かう前、再度C組の中を覗くと、彼は中央の列の後ろの方の席に、ぽつんとひとりでいた。

「……」

顔はこっちを向いていなかったけれど、きっと、黒髪の向こうにある瞳は、私たちを見ていたはずだ。

そう考えながら、私はしばらく、別人のように振る舞う彼を遠くから眺めていた。