「お姉ちゃん、今日も松葉さん来てたよ」

「あら、そうなの?よく来るわね、あの人も」


婚約者のくせに、姉もどこか他人事なのはいつものことだった。

姉と松葉さんは淡白な関係なのかもしれない。

祖父同士が決めた婚約者だから、こんなものなのかな。


でも、お姉ちゃん昔———

「松葉さんって結構まっすぐな人なのね」って、あの男を絶賛していたのに。


今日もあの男は、しばらく家に居座って、姉が戻る前に帰ってしまった。

すれ違いばかりの2人だけど、休みの日はいつも姉に会いにくるのだから、あの男は意外と一途なのかもしれない。


「何考えてるの?ゆず」

「え、なにも」

「そう?すごい真剣な顔してたけど」

「そんな顔してないよ。それよりお姉ちゃん、たまには早く帰って来なよ」


毎回毎回、忠犬のように姉の帰りを待つあの男が少しだけ不憫にも感じられる。

すこーしだけ。