「決めた。僕、絶対にマジシャンになる!世界一のマジシャンになって、色んな人を楽しませるんだ!」

「あたしもマジシャンになりたい!一緒にマジックできたらいいね」

ただ、偶然同じマジックショーを見た子ども同士の小さく儚い約束だった。しかし、その約束は鎖となり、琴葉の体を縛り続けることとなる。それを知るのは、もう少し先の話だーーー。



それから十年後の八月。とある一軒家の一室では子どもたちが目を輝かせながら目の前の光景を見ている。視線の先にいるのは琴葉だ。

「みんな、よ〜く見ていてね?この本が一瞬で消えちゃうよ〜。三、二、一!」

琴葉が目の前に置かれた本に布をかけ、もう一度布を外すとそこにあったはずの本がない。本が消えてしまったことに、子どもたちは「すげ〜!」と口々に言う。

「ねえねえ、本はどこに消えたの?」

「そうだね〜。誰かのかばんの中に入ってるんじゃないかな?」

子どもからの質問に琴葉が答えると、子どもたちは一斉にかばんをひっくり返して本を探す。数秒後、一人のかばんの中から本が見つかり、琴葉は子どもたちからまた「すごい!」と言われた。