「ひどいなぁ、人をバカ呼ばわりして〜。」

今、類はどんな顔をしているだろうか。気になるがそれを見る勇気は無い。
それにしても、この気持ちはなんだろう?なんでこんなに心臓がうるさいの…?
少しでも類に悟られないようにと息を吐いて、取り繕う。

「なんであんたが私の服買うの?私が買うのには高すぎるんだけど。」

いつも来ているのはファストファッションの安いやつだけ。こんな高いブランドなんてもちろん着たことないし名前すら知らない。

「俺がしたいからしてるだけ。綾那には拒否権ありませーん。」

「…本当に類のことが理解できない。」

「ふふ、そうやって俺のことで悩んでたらいいんだよ。」

そう言って類は振り返った。
どきっとして赤くなる顔を下を向いて隠した。
こんなに惑わされるなんて…。私はどうしてしまったの?

私は繋がっていた手を振り払って先を歩いていた類を追い越す。

「……そう言われるとなんか癪に触るな…。」

「ははっ!」

類はすぐに私の隣に並んだ。…今まで私に合わせててくれたのかな。
そんな些細な心遣いもキュンとしてしまって、そんな自分に戸惑いを覚える。

(困った…もう末期かもしれない……。)

「とりあえず!絶対いつかお金は返すから!……いつになるかわからないけど。」

絶対にお願いしても聞かないだろうから一方的に言い放った。
思った通り、類はニコニコとするだけで否定も肯定もしない。

(一体全部でいくらだろう……。不安だけど絶対に返さないと!!)

そう覚悟を決めて深いため息をつくのだった。