呆然としてると、あれよあれよという間に会計が進み、カードを渡そうとする類の腕を必死に掴む。

「ちょっと待って!!類、あんた何考えてんの!?」

私が訴えても悪びれる様子もなく、心底わからないと言うように丸い目で私を見る。

「ん?」

「ん?じゃないでしょ!なんで勝手に…」

私は納得がいかず、いつもの私なら絶対に出さないほどの大声で類を止める。

しかし、類はキョトンと効果音がつきそうな顔で平然と言った。

「綾那、忘れたの?今日は俺の言うことなんでも聞くんでしょ?」

「そんなこと一言も言ってな…」

 思いもよらないことを言われ、訂正しようとするも

「じゃあバラしてもいいんだ?」

なんて言って脅してくる。正直、脅すところ間違ってると思うけど…金持ちの考えることはよくわからない。
まず、こんな高級そうな店に入る時点で私とはまったく感覚が違うのだろう。

「………腹黒野郎。」

少しでも抵抗しようと睨むが類の笑顔は深まるばかり。

「あはは、じゃあ買ってくるね〜。」