「ちょっ…」
反射的に振り払おうとするも、やはり男と女。力では勝てない。
類には珍しく、少し強引に私の手を握り歩き出した。
「よし、行こう!」
そうして私は連行されたのだ。
***
(………やっぱり目立ってる)
私は心の中でため息をついた。
やはり人気アイドル、ちょっとした変装ではオーラを隠せない。
それに加えて隠してるのは顔だけ。つまり、スタイルの良さは勿論バレバレ。
(こんなの、芸能人ですって言ってるようなもんじゃん…)
私はチラッと隣を見る。
帽子とメガネをつけていても周囲に飛び交うキラキラオーラ…。
それに比べて私はただの黒いパーカーにショートパンツ。いたって普通の格好だが、類と並ぶとやはり見劣る。
こんな不釣り合いな男女が手を繋いで歩いてるんだから…そりゃあ気になるよね。
「…ねえ、手離さない?」
「やだ。」
「………」
「綾那の弱み握ってんだから大人しくしてて?…ね?」
類はそう言って首を傾げた。
…こいつ、自分の容姿を利用しやがって…。
私だって1人の女子。
こんなイケメンに間近でこんなことされたら許すしかないじゃないか。
「……お手柔らかにお願い」
「ふふっ、善処するね」
美しく笑う類に、ああやっぱり美形って強いな、なんて思っていた。

