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『キーンコーンカーンコーン』
校内に鳴り響くチャイムの音は今日の学校の終わりを示す。
人混みに紛れて下校の道を進む私はうんざりしていた。
我慢ならず、私は後ろを振り返る。
「……ねえ、付き纏うのやめてくれない?」
HRが終わってすぐに立ち上がった私の後ろに類がついてきたのだ。
「人聞きが悪いなあ。俺は友達と歩いてるだけじゃんか。」
「……私は友達なんていないけど。」
私は辛辣に言い放ち、そろそろ離れてくれないかと目線で訴えるも、類は知らないふりを決め込む。
「えー、俺達秘密を分け合った友達じゃん!」
(私の考えを分かっているくせに…。)
「私は友達って認めてない。」
「綾那は釣れないな。」
類はそう言って苦笑した。しかし、その言葉とは裏腹に、優しさに満ちた笑みで…。そう、まるでごねる子供を優しく見守る父親のような…
(…何よその顔。居心地悪い…。)
「あ、そうだ。類。」
「ん?どうした?」
優しい笑顔で問いかける類に内心狼狽える。
…なんか、気まぐれな子供みたいに見られてる気がするんですけど。まあ、いい。
「その、rainの事。やっぱり周りに言わないでほしい。」
さっきまで、考えていた。私は本当に周りにバレてもいいのか。
…このことを知ったあの人達が、どう出るのか。
「なんで?」
「……知られたくない人が、いるから。」
嘘をつくのは躊躇われて、目を逸らしながらも事実を伝える。
「……そっか。分かった。」

