「………教えなーいっ!」
「は?…なんでよ。」
「……この曲はね、ネットに出回ってないんだ。曲名で調べてもきっとなにも出てこないよ。」
「…………」
(……出回ってない?なら、なんで……)
驚きに染まった顔で見つめた私を類は優しい笑顔で包んだ。私の思考の答えを言うようにその口から発せられた言葉はより私を驚愕させる。
「だって………俺の通ってたピアノ教室の先生が作った曲だから。」
私の表情は驚きに染まる。
それならば余計に私がこの歌を知っていた理由が気になる。
そのピアノ教室の先生と知り合いだった、とか?
そこに通っていた子に教えてもらった、とか?
それとも、やっぱり…
類と昔、関わりがあったのだろうか……?
「……ねえ、他にも弾くから歌ってくれない?綾那の声、好きなんだ。」
類の声で現実に引き戻される。
……まあ、考えるのは後でいいか。
「いいよ。私も楽しかったし。」
これは私の素直な気持ち。純粋に類のピアノに合わせて歌うのが楽しかった。息が合って、パズルのピースがはまるみたいに歌とピアノがマッチするあの感覚。とても楽しかった。
「やった!じゃあ前rainが歌ってた……」
その後も時間を忘れて類のピアノに合わせて歌っていた。

