トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜


歌は好きだ。だから今までもrainとして活動してきた。でもこんな感覚……これほどの感動はなかった。
…それなのに何故かこの感覚を知っているような気もする。
そんな矛盾に疑問を感じる余裕もその時の私にはなかった。


(気持ちいい……!)


もっと歌いたいという想いが溢れてくる。
その想いに従うように気持ちはどんどん高ぶり、歌声はさらに大きく響く。
心なしかピアノの音もさっきより弾んでいた。


頭で考えるんじゃない。ーー心で歌うんだ…!



今まで経験したことのない感動が溢れるの中、見えた教室の景色はさっきよりもキラキラと光輝いている気がした。


***


♪〜………


「はぁ……は……」

歌い終えた私は息切れしながら放心状態でただただ信じられない気持ちでいっぱいだった。
椅子の背もたれにぐたっともたれかかる。
思えばこれまで歌って息切れをしたことはなかった。こんな快感も、味わったことなかった。
何もかもが初体験で呆然とする私に、類はにこやかに声をかけてきた。

「ふぅ……気持ちよかったねー…!」

類は疲れ切った私を見て楽しそうに笑った。幼い子供のように無邪気な笑顔で。

「……うん。……気持ちよかった……」