……この静寂が嫌なのだ。
静かなはずなのにうるさくも感じる、この空間が。
私は早足でリビングへ行き、テレビの電源をつけた。
テレビからは賑やかな声が聞こえる。どうやらちょうどバラエティ番組をつけてしまったようだ。
静寂も嫌だけどうるさいのも嫌だ。
そう思ってしまう極端で我儘な私は面倒くさいなと自分でも思う。
でも性格上、仕方のないことなのだ。
私はコートやマフラーも外さず、制服のシワなども気にせずテレビの前に座り込んで、テレビのリモコンを手当たり次第押していく。
ポチッ…ポチッ……
一人きりの部屋にかわいた音が響く
「………あ…」
あるボタンを押した時、画面には先ほど会った類の姿があった。
これは…音楽番組か。
世間話をする彼はテレビの中でも笑顔で、その場を和ませていた。
be shineの他のメンバーも明るく面白いトークで観客を笑わせていた。
…私と類は正反対だ。
類はいつも笑顔で…周りに気を遣っていて……
それに比べて私はどうだろうか。
笑顔なんか今日やっとできることに気がついたくらいできなくて…周りに気を遣うなんてこともせず、自分勝手に振る舞って…
テレビではトーク時間はおわり、パフォーマンスが始まった。
be shineのメンバーはみんなすごくかっこよくて見惚れてしまうほどだが、私はずっと類だけを見ていた。
さっきは私のすぐ隣…肩が触れ合いそうなくらいの距離にいたのに。
どうしてだろうか。類が……あまりにも遠い。
私なんかが近づいていい人じゃない。近づきたくても届かない。そんな感じがする。
彼の隣に立つには、私はあまりに釣り合わないのだ。
彼とは決定的に違う何かがある。
ーーそれは……なんだろう。わかるようでわからない。
ーー私は…このままでいいのかな……
テレビの中で輝く類をぼんやりと眺めながら私はそんな事を考えていた。

