夜8時頃、辺りがすっかり暗くなった時、綾那はやっとベンチから立ち上がった。
類が去ってからもう何時間も経っている。

今日も家に帰るのが憂鬱だ。家は静かすぎて居心地が悪い。

(……はあ。帰るしかないよね〜……)

綾那は足取り重く家に向かって歩き出した。

私は今、一人暮らしをしている。


……ある頃、家族の中に確執ができてから、家が本当に居心地悪くて、手紙だけ置いて家を出てきたのだ。
もちろん、生活費などは自分で稼いでいる。
あの親に借りを作りたくなかったしね。

前はお金を稼ぐために普通にコンビニや近くのカフェでバイトしていたが、人と関わるのが嫌で辞めた。

そこで小さい頃に習っていたボイトレを活用できないか考えて、今はrainの活動をしてお金を貯めてるってかんじ。 

始めたばかりの頃は知名度が今より全然低くって苦労したけど、今はお金にも結構余裕がある。



rainの初めての活動の時のことなどを思い出していると、いつのまにか住んでいるアパートの前についていた。

アパートは古びていてあらゆる所の壁のペンキが剥げている。
でもその分、家賃は安いし私はあまり気にしていない。
カンカンと音を鳴らして階段を上がり、自分の部屋に入る。


部屋の中は物音ひとつせず、シーンと静まり返っている。