トクベツにならないで〜独占欲の強い少女は人気アイドルになびかない〜


「ごめんねっ!驚かせちゃったみたいで…」

不機嫌な私の前には両手を合わせて謝っている転校生がいる。
先程の制服とは違って、今は私服だ。
紺色のコートにダメージ加工のついたジーンズ、白いマフラーというシンプルな服装だが、とても似合っている。

名前……なんだっけ?青…なんとかだったっけ。
青木かな。

「……何の用?青木くん。」

「……あの、俺青木じゃないんだけど…。逢崎なんだけど……」

青木……じゃなくて、逢崎がおずおずと申し出たが、正直そんな事どうでも良い。

「そうなの?まぁ、なんでも良いでしょ。
で?何の用なの?」

「用ってわけではないんだけど、撮影の休憩の時に綺麗な歌声が聞こえて…一ノ瀬さんが歌ってるとこ見た時はホントに驚いたよ」


……私も急に視界に手が割り込んできた時は驚いたよ


「……」

「とっても綺麗な声してるね。歌うの好きなの?」

「……まあ、それなりに」

「ねえ、よかったらもう一度聞かせてくれない?」

「……え?」

「一ノ瀬さんの歌、本当に綺麗だったから。もう一度聞きたいなって思って……ダメかな…?」