アンハッピー・ウエディング〜前編〜

しかし、時計を眺めていてもつまらなかったらしく。

「ねーねー、悠理君」

やっぱり5分足らずで飽きて、話しかけてきた。

「何だよ」

今、潰したじゃがいもに、炒めた玉ねぎとひき肉を混ぜて調味してるところ。

「時計ってね、針がぐるぐるしてるだけでつまんない」

「…そういう道具だからな。時計」

お前は他に、時計に何を期待したんだ?

「やっぱり悠理君とお喋りしてても良い?」

「良いけど…。催促はやめてくれよ」

「うん」

それなら良いよ。喋っても。

…って、調理中にお喋りするのはあんまり良くないのでは?

そういうこと、お嬢さんは気にしないらしい。

「何の話をするんだ?」

「そうだなー。うーん、おうちに帰ったら悠理君に言おうと思ってたことがあったような…」

「…」

何だよ。…昼間、新校舎の中庭で目が合ったときのことか?

すると。

「あ、そうだ思い出した」

「何を?」

「昨日見た夢の話。同じ人生を2回やり直す夢だったんだー」

…学校のことじゃないのかよ。

で、夢の話だって?

「同じ人生をやり直す…?」

「うん。一回目が上手く生きられなかったから、神様にお願いして二回目の人生をやり直す夢」

ファンタジーな夢だな。

何だっけ、今流行りの…異世界転生モノ、って奴?

「どうだ?二回目の人生は成功したのか」

「うーん。成功した人もいたけど、失敗した人もいたなー」

二回目だからって、上手く行くとは限らないってか。

「私にそっくりの人もいたけど、その人は成功してたよ。アイドルになってた」

「…ふーん…」

お嬢さんがアイドル…ねぇ。

全然イメージじゃないけど。

それにしても…。

「面白い夢見てたんだな、あんた…」

俺、そんな面白そうな夢、見たことないぞ。

いや、見たことはあるのかもしれないけど…。起きたら忘れてるんだよ。

夢の内容を詳細に覚えてるってことは、あんまりない。

「悠理君は、昨日何の夢見たの?」

「昨日?えぇと、昨日は…」

コロッケに衣をつけながら、俺は昨日見た夢を思い出した。

…そうだ、思い出した。

「草…雑草の洪水に押し潰されて、窒息しそうになる夢だったよ」

悪夢じゃねぇか。

多分、昨日一日中草むしりさせられたから、そのせいだな。

ファンタジーに満ちたお嬢さんの夢と比べたら、俺の夢なんてそんなもんだよ。

「悠理君も面白い夢を見るんだね」

「…面白くねぇよ…」

草に押しつぶされるんだぞ?普通に悪夢だろ。

今夜はもっと良い夢見れたら良い…と思うけど。

今日も一日中外掃除だったから、やっぱり似たような夢見そう。

良い夢見る方法って、何かないのだろうか。