アンハッピー・ウエディング〜前編〜

俺に気を遣ってくれてるんだろうか?男子部にはお土産がないこと、お嬢さんも察してるんだろうか。

だからって、おこぼれをもらっても…余計惨めになるだけなんだが。

…お嬢さんが、そこまで考えてる訳ないか。

多分この人のことだから、自分が食べてみて美味しかったから、俺にも食べてもらって。

一緒に「美味しいね」って言って欲しい。とか、そんなところだろう。

「凄く美味しかったからね、悠理君にも食べて欲しいんだ」

とのこと。

ほらな?俺もお嬢さんが何考えてるのか、ちょっとずつ分かってきたよ。

案外この人、何も考えてないから。

…まぁ、良いか。

「分かった。じゃあ、後で食べるよ。ありがとう」

そこまで言うなら、有り難くもらうよ。

…後で俺が生八ツ橋もらったって聞いたら、雛堂はまた烈火の如く怒るだろうなぁ…。

…黙っとこ。

あいつ、今頃カラオケルームでアイスクリーム食べまくってるんだろうし。

「さて、それじゃあ、俺はこれから夕飯を作るから…。お嬢さんは向こうで、ちょっと大人しく待っててな」

俺は、小さな子供をあやすように言った。

しかし、お嬢さんは。

「ここに座って、悠理君を見てたら駄目?」

と、聞いてきた。

ここにって、キッチンにってことか?

「いや…。そんな、じろじろ見られてたらやりにくいんだけど…?」

監視?監視するつもりなのか?サボってんじゃねぇぞ、って?

サボってねぇけど…別に…。

あ、それとも…こっそりにんじんをすり下ろして混ぜたのがバレたのか?

お嬢さんの嫌いな野菜を、俺がこっそり使ってんじゃないかって?その為の監視?

「見てたら駄目?」

「…向こうで待っててくれよ」

「…そっかー」

しょぼん。

おい。なんか俺が悪いことしたみたいじゃないか。

だって、そんな小姑みたいに料理するところをじろじろ見られてたら。

誰だって、気が散ると思わないか?

「じゃあ、ポテトチップスでも食べながら、向こうで待ってるね」

「あぁ、うん…。…って、夕飯前にお菓子はやめなさい」

「ほぇ?」

ほぇ?じゃないから。

食後のおやつにするなら良いけど、食事前のおやつはやめなさい。