アンハッピー・ウエディング〜前編〜

帰宅後。

俺が家に帰ると、既にお嬢さんは家に帰ってきていた

「悠理君、お帰りー」

「あぁ、ただいま…。…もう帰ってきてたんだな」

俺は家の仕事があるから、放課後は直帰しないといけないけど。

お嬢さんは、別に遊んで帰ってきても良いんだぞ。

それこそ、お嬢様友達とお茶会とかしても良い。

俺のことは気にせず、好きなところに行って友達と遊んできてくれ。

一人の方が、家事、捗りそうだしな。

別にお嬢さんが邪魔って訳じゃないけども。

…ま、いっか。

さっさと、夕飯の支度しよう。

すると。

「悠理君、これあげる」

「あ?」

お嬢さんが、小さな個包装のお菓子を手渡してきた。

…何これ。

よくよく見てみると、それは今日雛堂が散々喚いていた…。

「…生八ツ橋?」

「京都のお菓子なんだって」

やっぱり生八ツ橋だ。チョコ味の。

何でお嬢さんがこんなものを…?

「どうしたんだ?これ…」

「帰りのホームルームで、先生が皆にくれたの。一年生が新入生オリエンテーションで京都に行ったから、そのお土産って」

…マジで?

上級生にまで、お土産買ってきてもらえんの?

それなのに、何故男子部の生徒には買ってきてくれなかったのか。

女子部の生徒は、上級生までお土産買ってきてもらってんのに。

三日間大掃除にこき使われた俺達は、そこらの自販機で買えるスポドリ一本…。

俺は思わず、お嬢さんの差し出した個包装の生八ツ橋を見て、呆然としてしまった。

…悪態つけないって言ったの、あれ撤回しても良いか?

めちゃくちゃ悪態ついてやるよ。不公平だろってな。

それなのに、お嬢さんはそんなことは全く知らず。

「一人2つずつもらったんだー。いちご味とチョコ味。一個自分で食べて、もう一個は悠理君にあげようと思ったの」

それはどうも。

別に、俺に気を遣わず、一人で全部食べても良かったんだぞ。

むしろ、俺が帰るまでに食べて、証拠隠滅していて欲しかった。

まさか女子部の生徒はお土産もらってたなんて、出来れば一生知りたくなかった。

「…?悠理君、どうしたの?」

「え、いや…」

呆然としている俺に、お嬢さんはきょとんと首を傾げた。

「あっ。チョコ味は嫌だった?いちご味の方が良かった?私、いちご味食べちゃった」

そうじゃなくて。

「違うよ。ちょっと…社会の不平等問題について考えてただけだ」

「そっか。悠理君賢いねー」

それは皮肉か。

「はい、お菓子。難しいこと考えるには、甘いものが必要だよ」

と、お嬢さんは改めて、チョコ味の生八ツ橋を差し出してきた。

…どうも。

「気持ちは嬉しいけど、あんたが食べて良いんだぜ。あんたがもらったんだから」

いくら不平等だからって、お嬢さんがもらった分を分けてもらおうとは思わんよ。

しかし。

「でも私、悠理君に食べて欲しかったから」

…何で、そんな頑ななの?