アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「何で?星見の兄さんも眷属の仕事してんの?」

俺と乙無を一緒にしないでくれるか。

俺は人間だよ。

「そうじゃなくて…。…他に用事があるんだよ」

俺、普通の男子高校生と同じ立場じゃないからな。

ただ無月院本家の「ご厚意」で学校に通わせてもらってるってだけで。

俺の本来の役目は、普通の高校生でもないし、邪神の眷属でもなく。

お嬢さんの、身の周りの面倒を見ることなのだ。

もっと平たく言うと、家に帰ったら家事をしなきゃならないってことだ。

近所のスーパーに寄って買い物して、帰ったらすぐ洗濯物取り込んで、それから夕食の支度をして…と。

やることは山積みである。

雛堂には悪いけど、放課後に遊んで帰るような余裕はない。

そんな甘えが許される立場でもないしな。

でも、「家事が忙しいので遊べません」と言うと、なんか複雑な家庭環境なんじゃないかって、余計な勘繰りをされそうだし。

用事があると言って、誤魔化そうと思った。

家事だって、用事の一つに変わりないしな。

「…マジ?二人共忙しいの?もしかして、暇なのって自分だけ…?」

呆然とする雛堂。

…いや、別にあんたが悪い訳じゃないから。

俺と乙無の付き合いが悪いだけだから。

時間に余裕さえあれば、付き合ってやったんだけどな…。

「ちくしょーっ!ノリの悪い奴らめ。こうなったら、良いもんね。一人で行ってやる!」

と、何やらやけっぱちの雛堂。

一人でカラオケ行くのか。度胸あるな。

いや、でも最近は一人カラオケって、割と一般的なのだろうか? 

今日はカラオケを諦める、という選択肢は、雛堂にはないらしい。

それなら、俺と乙無の分まで楽しんできてくれ。

あと、絶叫はやめろよ。

「それじゃ、また来週な」

「おぉ。じゃーな、星見の兄さん。乙無の兄さん!」

「えぇ。また来週会いましょう」

そうやって、教室で雛堂と乙無と別れ。

それじゃあ俺は、夕飯の買い出しに寄ってから帰るとするかな。