アンハッピー・ウエディング〜前編〜

この際だから、はっきり言ってくれれば良いのにな。

新校舎のお嬢様達に、お掃除なんて召使いみたいな真似はさせられません。

代わりに野郎共、お前らがやれ、って。

そういうことだろ?今俺達がやらされてることって。

大掃除初日に自分達の校舎、旧校舎を掃除して。

二日目に、旧校舎周辺の外掃除をやって。

三日目は何処を掃除するのかと思ったら、まさか新校舎だったとは。

俺もう、明日街に駆り出されてゴミ拾いしろ、って言われても驚かないよ。

さすがに明日は休みだと思うけど。

「くっそー…。何で自分達がこんなこと…。女子部の新入生にやらせろよ」

「無理ですよ。あの人達、今頃京都に…。って、そろそろ帰ってきてるんでしょうかね?」

知らねーよ。

疲れたねーって笑いながら、新幹線の中でお喋りしてんじゃねぇの?

「生八ツ橋…。生八ツ橋一箱くらい買ってきてくれるんだろうな?一人に付き一箱!」

お土産要求をする雛堂。

一人一箱、どころか。

「お土産なんて買ってきてもらえる訳ないだろ。旅行行ってる連中は、俺達がこうして大掃除してることも知らねーよ」

「何だとぉ…?さっき集めたゴミ、玄関にぶち撒けといてやろうか」

やるか?いっそ。

と思ったけど、新校舎の連中に楯突くのは駄目だ。

最悪、入学四日目で退学させられる羽目になる。

そうしたら、三日かけて掃除したのも全部無駄になるんだぞ。

「畜生…。なんか良いことない、」

と、雛堂が呟いた、そのとき。

新校舎に、チャイムの音が鳴り響いた。

…授業終わったか?
 
俺達の掃除はまだ終わらないけどな。

「はぁ…。自分達もこのまま、家に帰りたい…」

「…もうちょっとだろ。頑張れ」

「生八ツ橋食べたい…」

…それは諦めろよ。

「なぁ、乙無の兄さん。兄さん生八ツ橋は何味が好き?」

「さぁ…。食べたことないので知りませんけど」

食べたことねぇの? 

修学旅行、京都じゃなかったのか。

「そもそも、邪神の眷属に食事をする必要はありませんから。不必要に食物を口にすることはありません」

ドヤァ、と得意げな乙無。

あ、そう…。食べる楽しみのない人生って、つまんなくね?

「自分はやっぱり、チョコ味とかいちご味が良いなー。ぶっちゃけニッキ味ってあんまり、」

と、ニッキ味崇拝者が聞いたら怒りそうなことを、雛堂が言いかけたそのとき。

「…おっ?」

俺達が今掃除している、中庭の渡り廊下に繋がる扉がガチャッ、と開き。

教科書の束を抱えた新校舎の女子生徒達が、わらわらとやって来た。